“うつ”に関する10の誤解☆薬だけに頼らない治療【認知行動療法】その②

前回の 「“うつ”に関する10の誤解☆薬だけに頼らない治療【認知行動療法】その①」に引き続いて。





1.誤解7:若い人に『新型うつ病』が増えている


新型うつ病とは、2010年前後にマスコミに作られた造語で、「精神科医にさえ理解不能な新しいうつ病で、会社に出てこなくなる主に若い社員が増えている」という形で流布された概念です。


普通は、うつ病だと宣告されると「私は違う」と否定するのに、彼らは平気で受け入れ、上司や同僚、環境など周りのせいにして、休職して職場には行かず海外旅行のようなイベントには平気で出かける。


そもそも正式な精神医学の用語には、「非定型うつ病」というものはあっても「新型うつ病」はありません。新型うつ病固有の特徴らしく思われる唯一のものは、「気分反応性」の存在です。あらゆる刺激に反応できなくなるのではなく、楽しい刺激ならポジティブに反応できる(海外旅行には行ける)ことです。しかし、こちらも別の意味で本当に新型うつ病の特質といえるのかは疑問です。 つまり、時代の変化によって、働き方や考え方が変わってきている中でうまれた非定型うつ病の一種かと思われます。



2.誤解8:うつ病は『遺伝する病気』である


これらは科学的にも間違った認識です。

たとえばうつ病以上に「遺伝する病気」というイメージの強い、統合失調症の場合。遺伝子としては100%同一である一卵性双生児のうち、片方が統合失調症を発症したとして、もう片方も発症する割合は50%。一般には統合失調症をわずらう確率は1%なので、この数値だけだと遺伝の影響が大きそうにみえます。


しかし逆にいうと、遺伝子が完全に同一でも発症率が100%にならないということは、遺伝ではないということを示しています。さらに研究が進むと、単一の「統合失調症をもたらす遺伝子」なるものは存在せず、最低でも2つ以上の遺伝子変異の組みあわせが、「発症しやすい体質」に関係していることがわかってきました。つまり、統合失調症に関係する遺伝子を持っているのは、むしろごくふつうのことで、なんらかのはずみでたまたま発症するか、しないかのちがいがあるだけなのです。


遺伝の影響がより強いともいわれる、双極性障害(躁うつ病)の場合でも、2007年の研究によると、双極性障害になるリスクを2倍以上に高める遺伝子は、おそらく存在しないと指摘されています。関節リウマチや2型糖尿病で発見されるような「遺伝的危険因子」が、大規模なサンプル調査をしても見出されなかったのです。



3.誤解9:『カウンセリング』が重いうつに効く


保険が効かないため利用料金が非常に高額にもかかわらず、原因が判別不能な重い精神病患者には、さほど効果的ではありません。カウンセリングは、過去のトラウマや周囲のストレス、それを許せない自分の性格といった特定可能な原因の存在が比較的はっきりしているうつ病、俗にいう相対的に軽いうつ病には効果を発揮します。


特に、双極性障害の場合は、心ではなく脳の疾患なのでカウンセリングだけで治ることは皆無です。



4.誤解10: うつ病は『認知療法』でなおる


抗うつ薬もカウンセリングも万能ではないことが明らかになって、うつ病治療の手段として注目されているのが認知療法・認知行動療法(CBT)です。臨床心理士と患者が一対一で行う療法と、複数の患者でグループを組んで行う集団認知行動療法(CBGT)もあります。


うつ状態に入ると精神運動障害が顕著になって、なにをいわれても無表情・無反応になり、鉛様の麻痺が生じて完全に寝たきりになることもあります。これがいわゆる「うつで意欲が低下した」状態ですが、しかし、そういう患者は脳内でも思考が停止しているわけではありません。


双極性障害の抑うつ気分に関する記述ですが、「あるべき意欲がないというものではなく、むしろ、普段あるはずのない、筆舌に尽くしがたいうっとうしい気持ちが襲ってくる」「辛い気分が、まるで永遠に続くかのように感じられる状態」 …つまりネガティヴで、回復を妨げるような考えても無益なことばかりを、異様なほどの速度で考えつづけていたりするのです。




與那覇氏の場合の「思考のぐるぐる」


「文章も書けない、会話もできない。こんな自分が大学に勤めつづけられるわけがない」 → 「では辞めようか。しかし研究者以外の職歴がない自分を、どんな会社も雇うはずがない」 「『ツレがうつになりまして。』の人は、漫画家の奥さんがいたから助かっただけだ。独身の自分を助けてくれる人なんていない」 「そんな生き方をしているなんて恥だ。死んだほうがましだ」 「でも死にそこなったらどうする。大学教員の自殺未遂なら、新聞沙汰になるかもしれない。もっと周囲の迷惑になる」 「だったら生きつづけるしかないが、できる仕事がない……」 



といった、出口のない悪循環に落ちていくばかりの時期が、半年近くつづきました。

(與那覇氏を担当した臨床心理士が「思考のぐるぐる」と命名。)



ただし、この状態にストップをかけるうえで、「自分の思考のクセ」を把握し、修正していく認知療法はとても有益です。


認知療法は、患者自身の「思考のクセ=認知のゆがみ」に問題を見出し、介入していく治療法です。そのため「要は、おまえがネクラなのが悪いんじゃないか。やっぱり性格の問題じゃないか。」といった、発病の責任をすべて本人に帰する非難のしかたと、あっさり結合してしまう危険性も高いのです。

そういう弊害を避けるためには、治療者と十分な信頼関係があるとか、病気の悩みを共有してくれる仲間が多数いるといった、時間をかけて整えなくてはえられない環境が必要です。


うつ状態の人の思考が循環してしまう理由として、病気の症状としてのさまざまな妄想――「病気になったのは自分が許されない罪を犯したせいだ」といった罪業妄想や、「仕事をやめたら即座に無一文になって飢え死んでしまう」とする貧困妄想、「他の人がなおっても自分だけは絶対になおらない」と思いこむ心気妄想に、患者がとらわれてしまうことが指摘されています。


そこから抜けきらない状態のままで、あせって認知療法などを開始したら「ああ、やっぱりそうだ。こういうゆがんだ思考の人間だから、自分は病気になったんだ」という自責感を、極大化させかねません。その先に待っている最悪の帰結は、当然ながら自殺です。 


與那覇氏がCBGTを受けたデイケアでは、認知行動療法は「治療」というよりも「再発防止」の手段として位置づけられており、希望者にたいしても「受講可能な段階まで回復したこと」を確認できるまで、待たせるスタンス。 與那覇氏自身、認知療法を通じて得たものは大きかったと思うだけに、あたかも「だれでも、いつでも、やればかならず効果の出る特効薬」のように誇張されたイメージが広がるのは、うつ病関係者にとってむしろ不幸なことだと感じている、そうです。


出典:與那覇 潤 東京大学教養学部卒業、同大学院総合文化研究科博士課程をへて、2007~15年まで地方公立大学准教授として教鞭をとる。「知性は死なない平成の鬱をこえて(文芸春秋)」より





5.認知行動療法の現場にきく


一般社団法人認知行動療法研修開発センター理事長 大野裕氏より

認知行動療法とは


私たちの感情は、ものの見方(認知)の影響を強く受けています。人間には何かストレスがあると、自己防衛本能で悪いことを警戒する傾向がありますが、危険を現実以上に過大評価すると、物事にうまく対処できなくなり、ストレスから抜け出せなくなります。


認知行動療法は、ものの見方や対処行動の選択肢を増やし、マイナス思考にとらわれず、悩みの根元の問題を解決できるようになることを目指します。訓練を積んだ医療者と面接を重ね、問題解決能力が高まれば、心のストレスも軽くなります。


うつ病には、2010年に保険適用になり、さらにその範囲が社交不安症、パニック症、強迫症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)にも広がりました。


治療方法について


うつ病では、悲観的になりすぎて冷静に問題に対処できなくなっています。ですから、まず現実に目を向けながら問題を整理するところから始めます。 社交不安症や強迫症などの方は、概ね本人も悩みを具体的に認識しています。「人前で話すのが苦しい」「手を洗わずにいられない」など、特定の場面や行動に少しずつ慣れて自信をつけていくことを目指しますが、ただ、病名だけにとらわれず、悩んでいる人全体を見ることも大事です。


精神科医の治療における位置づけは


精神科は薬物治療の印象が強いと思いますが、薬だけでは十分な効果が得られない患者もいます。安易な薬の増量を避けるためにも、薬だけに頼らない治療として期待されています。 最近の慶応大学の研究では、薬の効果が不十分だった中等度のうつ病患者が認知行動療法を受けると、その1年後、7割がほぼ無症状になっていました。 医療以外にも、心の健康のために教育現場や企業などで活用されています。


ただ、課題としては、取り組む医療機関が多くないのが現状です。1人の面接に1回30分以上かかり、1日に診察できる患者数が限られるので二の足を踏む医療機関が多いです。 一部で、集団療法や情報技術(IT)の活用などの工夫が試みられています。


一方、十分な訓練を受けずに、マイナス思考をプラス思考に修正するよう迫ったり、心の専門家であるまじき暴言を吐いたりなど、患者を困惑させる医療者もいます。無理に楽観的に考えさせるのではなく、患者が物事を柔軟に考えられるように手助けする治療ですので、厚生労働省も医療者向けに研修を行っています。






田和璃佳<インナーケアラボ主宰者>

田和璃佳<インナーケアラボ主宰者>

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