増える【心不全】について|息切れやむくみは要注意!でも心不全は予防可能

高齢者に多い心不全の患者数が、増加中。2005年においての患者数は約100万人ですが、2020年には、120万人を超えるといわれており、高齢化に伴い、2035年頃までさらにずっと増え続けると推計されているそうです。増える心不全についてその原因と対策をご紹介します。


目次

  1. 心不全について
  2. 心不全の原因とは
  3. 心不全の症状
  4. 心不全の治療
  5. 心不全の予防
  6. 緩和ケア


1.心不全について


●「心不全」とはどういう病気?


「心不全」とは、臨床症候群の総称であり、病名ではありません。分類基準は多数に広がりますが、高血圧や心筋梗塞、不整脈、弁膜症などの病気により、心臓の働きが悪くなった状態で、あらゆる心臓病の終末像といえます。


2017年10月に日本循環器学会がわかりやすく定義!


「心不全」とは

『心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気』


(…つまり。心臓のはたらきが弱まり、体に十分な血液を供給できない状態をいいいます)


日本にでは、30年以上にわたって死因別死亡総数の順位では、がん(癌)がトップですが、心疾患による死亡はがん(癌)に次ぎ2番めに多く、そのなかでも、心不全による死亡は心疾患の内訳のなかでもっとも死亡数が多い重要な病気です。


心不全患者数は、約100万人。そのうち、入院患者数は23万8,840人で,年に1万人以上の割合で増加しています。(循環器疾患診療実態調査報告書(JROAD 2015)   


ここで一つ注意することは、以前には「急性心不全」と「慢性心不全」と分けて判断していましたが、

①急性心不全の多くが慢性心不全の急性憎悪であること、

②急性期から慢性期までシームレスな治療の継続が必要であること

の理由から、名称を「心不全」と一本化することになりました。


また、心不全はいったん発症しても、適切な治療で症状は改善します。ただ、完治することはなく、過労やストレス、塩分や水分の摂り過ぎ、風邪などにより再発します。そして、悪化と改善をくり返しながら、徐々に機能が低下していきます。経過は悪く、心不全で入院したことのある人は5年間で約半数が亡くなっているというデータもあります。



国内データにおいて、入院した心不全患者の原因疾患として多いもの

  1. 虚血性心疾患
  2. 高血圧
  3. 弁膜症

なかでも虚血性心疾患の率が近年上昇しています。



2.心不全の原因とは


心不全の原因疾患は多岐にわたります。心筋梗塞や心筋症のように心筋組織が直接的に障害を受けて心不全を発症する場合もあれば、弁膜症や高血圧などにより心筋組織に長期的に負荷が加わり機能障害から心不全を発症する場合、頻脈性ないし徐脈性不整脈により血行動態の悪化を招く場合などがあります。


また、全身性の内分泌・代謝疾患、炎症性疾患などからの心不全や、栄養障害や薬剤、化学物質といった外的因子による心筋障害から発症する心不全など…心不全の根本原因が心臓以外に存在する場合もあるので注意が必要になります。


心筋の異常による心不全

虚血性心疾患虚血性心筋症、スタニング、ハイバネーション、微小循環障害
心筋症

肥大型心筋症、拡張型心筋症、不整脈原性右室心筋症

心毒性物質等

*アルコールやコカインなどの習慣性物質

*銅・鉄・鉛・水銀・コバルトなどの重金属

*抗癌剤・免疫抑制薬・抗うつ薬・抗不整脈薬・麻酔薬などの薬剤

*放射線障害

感染性ウィルス性、細菌性などの感染性
免疫疾患関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎など
妊娠周産期心筋症
浸潤性疾患サルコイドーシス、アミロイド―シス、悪性腫瘍浸潤
内分泌疾患甲状腺機能亢進症、クッシング病、副腎不全、成長ホルモン分泌異常など
代謝性疾患糖尿病
先天性酵素異常ファブリー病、ポンペ病、ハーラー症候群、ハンター症候群
筋疾患筋ジストロフィー、ラミノパチー


血行動態の異常による心不全

高血圧
弁膜症、心臓の構造異常

*先天性弁膜症、心房中隔欠損、その他の先天性心疾患

*大動脈弁、僧帽弁疾患などの後天性

心外膜などの異常収縮性心外膜炎、心タンボナーデ
心内膜の異常好酸球性心内膜疾患、心内膜弾性線維症
高心拍出心不全重症貧血、甲状腺機能亢進症、パジェット病、妊娠、脚気心
体液量増加腎不全、輸液量過多


不整脈による心不全…心房細動などの頻脈性と洞不全症候群などの徐脈性



3.心不全の症状


自覚症状がないことも多い病気ですが、見分ける一番のポイントは、『急な変化があるかどうか』です。


息切れやむくみが主な症状ですが、年をとると誰でも多少は息切れをします。ただ、ここ1~2ヶ月で急に息切れをするようになったり、これまで上れた階段が上りづらくなったというときは要注意です。


また、高齢者の体重が急に1~2kgも増えることはあまりありませんので、急な体重の増加は、心不全により肺に水がたまっていることを疑いましょう。


●心不全の症状


  1. 十分に血液(酸素)を送り出すことができないので、からだに必要な酸素が足りなくなり、息切れがしたり疲れやすくなったりします。
  2. 毛細血管に血がいきわたらなくなるので、手足の先が冷たく、肌の色が悪くなります。
  3. 血流が悪くなるので、臓器に水分がたまりやすくなります。(特に足の甲やすねのあたり)
  4. 肺に血がたまる(肺うっ血)と水分が肺にしみだし、さらに進むと酸欠状態になるので、安静にしていても呼吸が困難になります。


他の症状としては、

  • 呼吸困難
  • 食欲不振
  • 腹満感
  • 意識障害
  • 記銘力低下
  • 冷や汗
  • 四肢冷感
  • チアノーゼ

などがあります。


◆虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)


「狭心症」や「心筋梗塞」をまとめて「虚血性心疾患」といいます。「虚血」とは「血がない状態」のことを指し、つまり心臓に十分血がいきわたっていない状態が「虚血性心疾患」です。


心臓の筋肉(心筋)に血液を送り酸素と栄養素を供給する冠動脈が、動脈硬化等で狭くなったり、血管がけいれんを起こしたりすることで、血液が十分に心筋にいきわたらなくなったとき、心臓は酸欠(虚血)状態となり、胸痛等の症状としてあらわれます。


狭心症と心筋梗塞の大きなちがいは、心筋が回復するかどうかです。狭心症では心筋は回復しますが、心筋梗塞では心筋が死んでしまうので回復することはありません。


狭心症

運動時等、普段より酸素を必要とする状況では、心臓は血流量を増やして対応しようとします。ところが血液の通り道が狭くなる(狭窄)と、血液の供給が間に合わなくなり、心臓が酸欠状態になって起こる胸痛(狭心痛)のこと。

ただ、深夜や明け方の就寝中等、血管のけいれんや血管内に血のかたまりができて冠動脈の血流が減ったときに起こることもあります。


心筋梗塞

血管の内側にたまったコレステロールのかたまり(プラーク)に何かの拍子で亀裂が入ると、そこをかさぶたのように血液のかたまりが覆っていきます。このかたまり(血栓)が血管を完全に塞いでしまうと、その先の心臓の筋肉には酸素が届かず細胞が死にます。これを心筋梗塞といいます。



◆心筋症


心臓の機能障害と共に起こる心筋の病気を「心筋症」といいます。
心筋症は、拡張型心筋症(DCM)、肥大型心筋症(HCM)、拘束型心筋症(RCM)に分類されています。



◆弁膜症


心臓のポンプ機能を支えているのが、心臓内にある4つの弁です。(右心系にある肺動脈弁、三尖弁、左心系にある大動脈弁、僧帽弁)

心臓の弁膜症は、この弁の開閉がうまくいかない状態を指し、弁の開放が不十分な「狭窄症」、弁が完全に閉じずに血液が逆流する「閉鎖不全症」があります。4つの弁でこの現象が起きますが、約9割は左心系にある大動脈弁、僧帽弁で起こります。 先端にマイトラクリップがついたカテーテルを足の付け根から血管にさしこみ、心臓まで達したら、うまく閉じなくなった僧帽弁をクリップでつまみ、きちんと閉じるようにして血液の逆流を防ぐ治療方法もあります。



◆心房細動


心不全患者に最も多く併発する不整脈の一つであり、心臓を動かす電気信号が乱れ、心房が細かく震えて脈が不安定になる病気で自覚症状がないことも多い。

放っておくと心臓に負担がかかり、心不全を起こしやすくなります。また、環境の変化などで悪化することもあります。右脚の付け根の静脈からカテーテルという細い管を入れて心臓まで送り、心房細動の原因となる部位を高周波の電流で焼く方法もあります。



◆拡張不全


心臓が広がりづらくなるタイプの心不全のこと。高血圧や糖尿病などが重なって発症します。徐々に進行し、過労や風邪をきっかけに悪化し判明することが多い。 心不全によってたまった胸水が肺を圧迫して症状が出ていた。根本的な治療は無く、塩分や水分を控えて再発を防ぐ。



4.心不全の治療


心不全の状態を治療するにあたり、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病が心不全を進展させている要因であることが多いので、その併存症への対処も同時に考える必要があります。


心不全患者の多くは、基礎疾患としての高血圧、虚血性心疾患あるいは糖尿病、慢性腎臓病などの合併症を有し、特に、糖尿病を合併する心不全は増加しており、糖尿病患者の約半数が左室拡張機能障害を有するとされています。


また、腎機能低下を合併していることも多く、心臓病と腎臓病は密接な関係にあり、心腎関連の重要性が強調されています。



5.心不全の予防


心不全は予防できる病気です。健康なときから気をつけることとしては


  1. たばこを吸わない(禁煙)
  2. 食べ過ぎない
  3. 飲み過ぎない(多量飲酒は、アルコール性心筋症の原因になる)
  4. 適度な運動をする

といったことが予防につながります。


高血圧や糖尿病など、心臓病になりやすい状態になっても、血圧を下げる、肥満を解消する(減塩も)などの一般的な生活習慣の改善対策で防げます。


また、心臓病になってしまっても、適切な投薬治療や手術、生活習慣の改善などで、心不全の悪化を防ぐことができます。


6.緩和ケア


緩和ケアは、癌やエイズに対する終末期医療として発達してきましたが、最近では、循環器疾患や呼吸器疾患など生命を脅かすすべての疾患に対して考慮すべきものとされ、身体的のみならず、心理社会的な苦痛などの問題を早期に発見し、的確なアセスメントと対処を行うことによって、苦しみを予防し和らげ、 QOLを改善することの必要性が世界保健機関(WHO)で提唱されています。


心不全患者は、合併症も多いため心身への苦痛が多く、終末期に至る前の早期の段階から、患者・家族のQOL改善のためにも多職種チームによるサポートが重要だといわれています。


また、生命予後を改善するさまざまな医療機器が普及してきた一方で、QOLを重視する終末期においては、医療機器の作動停止も考慮されるべき選択肢であり、これらの意思決定支援を行うことも緩和ケアの役割の1つだといわれています。


2014年のWHOの報告によると、緩和ケアを必要とする疾患に循環器疾患が40%近くを占めているにも関わらず、国内では十分に認知されているとは言い難い現状です。 2016年には、厚生労働省より循環器疾患の緩和ケアの医療体制整備に取り組む方針が打ち出されているため、今後は心不全に対する緩和ケアの必要性を医療従事者に広がっていくことが期待されています。


終末期を含めた将来の状態の変化に備えるためのアドバンス・ケア・プランニング(advance care planning; ACP)を行うことは、とても重要とされます。


ACPとは、

意思決定能力が低下する前に、患者や家族が望む治療と生き方を医療者が共有し、事前に対話しながら計画するプロセス全体を指し、終末期に至った際に納得した人生を送ってもらうことを目標としています



緩和ケアが必要な終末期心不全


終末期においては、身体的苦痛以外に、心理的、社会的、スピリチュアルな苦痛など、全人的苦痛(total pain)を伴います。

これらのあらゆる苦痛を予防し取り除くためには、さまざまな方向から多面的にアプローチをする必要があり、それを解決する手段として、医師、看護師、薬剤師、臨床心理士、理学療法士、管理栄養士、医療ソーシャルワーカー、臨床工学技士など多職種チーム医療が存在します。

多職種のメンバーが、それぞれの専門性を発揮し、協働して患者診療にあたることで、患者のもつ全人的な苦痛の解決と質の高い緩和ケアの提供を可能にします。


緩和ケアが必要とされる終末期心不全(2016 ESC ガイドライン)

・進行性の身体的・精神的機能低下を認め、日常生活のほとんどに介助を要する

・適切な薬物・非薬物治療を行っているにもかかわらず、QOLの著しい低下を伴う重症心不全

・適切な治療にもかかわらず、頻回の入院あるいは重篤な悪化を繰り返す

・心移植や補助人工心臓の適応がない

・心臓悪液質

・臨床的に終末期に近いと判断される





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