【味覚】のメカニズム|味覚障害の原因とは?甘いものは別腹♪のそのヒミツ

「食を楽しむ」ということは、人間以外の動物にはほとんどみられない感覚です。味覚は、人間の持つ重要な感覚。「味わう」という能力の不思議や、最近多い味覚障害のことについてご紹介していきます。


目次

  1. 味覚を感じる舌の役割り
  2. 「味わう」という能力の不思議
  3. 脳がだまされる!?味覚を変える物質
  4. 味覚障害について


1.味覚を感じる舌の役割


味覚には、甘味、うま味、酸味、塩味、苦味の5つの基本味に加え、渋味や辛味などの刺激感のような味覚に相当する要素があります。味覚以外にも、温かさ、冷たさ、舌触りなど、総合的に調べる役割を担っているのが舌です。


味蕾(みらい)」と呼ばれる味を感じる味細胞は、数十個から数百個集まってできており、一般成人では舌に約5000個、舌以外には約2500個存在します。 舌以外だと、喉や口の奥の軟口蓋(上顎の奥のやわらかい部分)にもあり、「喉ごし」という言葉があるように、私たちは喉でも味を感じとっているのです。



●「おいしい!」と感じるのは…味蕾から脳への経路



口の中に取り込まれた食べ物が、味物質やイオンの形で味蕾内の味細胞にある受容体に結合すると、その情報が神経を介して脳(脳幹下部にある延髄の孤束核)に伝えられて、味の質や強さの分析が行われます。


それに連動して「おいしい」や「まずい」などの感覚もこの時に判断されます。このような味神経を介する情報が、脳内を通過する経路を「味覚伝導路」といいます。


味の基本的な選別と反射的な反応(酸っぱいものを食べた時の唾液の現象)は、延髄を含む脳幹部分で生じるため、たとえ大脳に障害があってたとしても起こるということが分かります。




2.「味わう」という能力の不思議


●基本の味「五味」の役割


私たちが感じる味として5つの基本的な種類がありますが、それぞれ重要な役割を担っています。


①甘味

甘味を感じているときは、体に必要なエネルギー源を摂取しているという信号を送っていると体は解釈します。 体にとって重要なエネルギー源となる食べ物は、糖質です。そして、直接エネルギーとなるものは、ブドウ糖(グルコース)であり、これが血液中に入ると血糖となります。

エネルギー源は常に体が必要としているため、体はこのような物質を味わった時は、おいしいという快感を生じることによって摂取を促進します。こうしたしくみは、もともと遺伝子情報に組み込まれているので、生まれてすぐの赤ちゃんの口にも砂糖溶液を入れるとにこやかな表情とともにそれを摂取しようとすることも知られています。

ただし、私たちが甘味を感じるものが、必ずしもエネルギー源になるものとは限りません。例えば、人工甘味料として利用される「アステルパーム」は砂糖の約200倍の甘さを感じるといわれていますが、ほとんど消化することができないため、エネルギー減にはなりません


②うま味

うま味は、主にアミノ酸であるグルタミン酸やアスパラギン酸、核酸を構成する物質であるイノシン酸、グアニル酸、キサンチル酸などの分子を検出します。これらの分子は肉や魚のタンパク質に多く含まれているため、うま味を感じることでタンパク質を摂取しているという情報を脳へ伝えます。また、うま味の感覚によって生命活動に必要なタンパク質と糖質を識別しているといわれています。


③塩味

塩味はナトリウムイオンを感知することで感じられます。私たちの体は一定量のミネラルを必要とするので、食べた物の中に適度な濃度の塩分を含むかどうかを感知しています。また、体液の塩分濃度に等しい1%前後の食べ物は、強い快感を感じると言われています。


④酸味

酸味は、本来私たちにとって有害な分子を検出し、警告する役割を担う感覚です。この酸味は、水素イオンを感知することで感じられます。食品が微生物によって分解され、その過程で酸の分子をつくられることにより酸味が生じます。


⑤苦味

苦味も酸味と同様に、私たちにとって有害な分子を検出し、体にとって毒物であるという警告をする役割を担う感覚です。

自然界には、植物に含まれるアルカロイド類などの苦味のあるものが多く、猛毒として知られるストリキニーネなどがあります。苦味を感じる細胞は、それらの物質に含まれる毒分子の検出を一手に引き受け、どの分子を検出したときも「苦い」という信号を脳へ送ります。 

しかし、人類は味覚によって危険な食べ物を感知しながら、こうした経験と知識によって毒物を避けるように進化し、ついには警告信号である苦味をも味覚の一つとして楽しめるまでになりました。 

その例として、コーヒーに含まれるカフェインやお茶に含まれるカテキンなどのさまざまな苦味成分があります。


基本味

生体への信号 代表的な物質
甘味エネルギー源糖(ブドウ糖・果糖・ショ糖など)の成分をもつ物質
うま味タンパク質アミノ酸であるグルタミン酸、アスパラギン酸、核酸を構成する物質であるイノシン酸、グアニル酸、キサンチル酸など
塩味快~不快ミネラルナトリウムイオンなどの金属系の陽イオンを出す物質
酸味快~不快腐敗物酢酸やクエン酸などの水素イオンを出す物質
苦味 不快毒物アルカロイド系化合物と呼ばれる物質(カフェイン、カテキンなど)



●基本の味以外の味の役割



①辛味

辛味は基本味とは異なり、三叉神経によって伝えられる感覚です。三叉神経は、痛覚や温覚を伝える神経です。この三叉神経に、トウガラシに含まれるカプサイシンなどの辛味物質の受容体があるといわれています。

この受容体は、本来温度のセンサーとして働きますが、辛味物質とも結合します。そして、その情報が脳へ伝えられ、辛味として認識されます。トウガラシの辛さは口に入れてから、一瞬の間を置いた後感じます。これは、カプサイシンが舌の表面から内部に浸透し、三叉神経に到達するまでに若干時間がかかるためです。辛味を認識するころには、カプサイシンは舌の内部に浸透しているため、口をゆすいでも辛味が消えないのはこうした理由によるものです。


②渋味

渋味は、緑茶や渋柿に含まれるカテキンやタンニンなどの苦味物質が口腔の粘膜を収縮させたときに感じる触覚の異常であるといわれています。縮められたような感覚を伴うことから、「収斂(しゅうれん)」と呼ばれることもあります。

渋味のメカニズムは未だに解明されていませんが、辛味と同様に触覚に近い感覚であると考えられています。


③コク

「コクがある」と表現される食材や料理は数多くあります。生クリームやチーズなどの乳製品、カレーやシチューなどの煮込み料理、牛肉やマグロのトロなどの動物性脂肪、さらに、ワインやビール、コーヒーなどの飲み物にも「コク」という表現はよく使われています。 

コクについての定義は不明瞭ですが、コクを生じさせる条件として、食品の素材の熟成、発酵、加熱処理などにより食品に含まれる多くの味物質や香り成分がつくり出され、その複雑な成分が味蕾を中心とした口の粘膜の受容体を刺激し、それらの情報が脳に送られることでコクを認識します。

つまり、「味(基本味)・香り・食感」がバランスよく合わさることでコクがあるという感覚が生まれます。


④アルコール

日本酒やビール、ワイン、焼酎など、これらのアルコール飲料に共通して含まれているのが、エチルアルコールという物質です。

味細胞には、アルコールだけに結合する受容体はありませんが、アルコールは基本味のうち、甘味と苦味の受容体を刺激するといわれています。このため味の質としては、やや甘くほのかに苦いという感覚になります。


⑤メントール

ミント味の飴やガムなどを食べると、ミントの味と共に冷たい感じを受けます。実はメントールそのものが冷たさを与えているわけではなく、メントールの受容体が冷感を感知することで冷たく感じるのです。



3.脳がだまされる!? 味覚を変える物質


ある物質を食べたことによる影響で、別の味に変化することがあります。このような、味覚を変える物質を「味覚修飾物質」といいます。これは、味物質の構造を変えるのでなく、味細胞の受容体に作用して、一時的に味覚機能を変える働きをします


●酸味を甘味に変える物質:ミラクリン

酸っぱいはずのレモンを口に含んだらオレンジのように甘くなったり、お酢をなめたら砂糖水のように甘くなったりするように、味覚をだます木の実があります。

この木の実の果肉を噛み潰し2~3分間口の中に含むと、レモンやお酢、梅干しなどの本来酸っぱく感じるはずのものが甘い味に変わってしまいます。このように奇跡ともいえるような働きをすることから、この木の実はミラクルフルーツと呼ばれています。

ミラクルフルーツが酸味を甘味に変えるメカニズムには、「ミラクリン」というタンパク質が重要な働きをします。ミラクリンは酸味を甘味に変化させるのではなく、舌が酸味を甘味として認識させる作用をします。

味覚は、舌にある味蕾の味細胞によって感じ取ります。味蕾には、それぞれの味覚を感じる受容体があり、通常酸味は、酸味を感じる受容体に結合するのですが、酸味の物質(水素イオン)が口の中でミラクリンと結合すると、物質の形が変わり、強制的に酸味の物質を甘味受容体に結合させるようになります。これにより、脳に甘いという刺激が伝達され、酸っぱい物を甘いと感じるといわれています。

ただし、ミラクリンは酸味を感じる受容体を塞いだり、麻痺させるものではないため、多少の酸味は感じます。また、味の感じ方を変化させているだけの物なので、食べた物の成分が変わるわけではありません。このことから、酸っぱいものを食べ過ぎると胃を悪くしたりするので気を付ける必要があります。


●甘みを抑える物質:ギムネマ酸

甘味をしばらく抑える健康茶として販売されているお茶に「ギムネマ茶」というものがあります。これに含まれるギムネマ酸が小腸の粘膜からの糖の吸収を妨げる働きをするため、糖分を摂取してもエネルギーにならず、血糖も上昇しないのでダイエットや糖尿病に有効であるといわれています。

このギムネマ茶を30秒から1分程度口の中に含んだままにすると、そのあとしばらくの間、甘味が全く感じられないという不思議な現象が起こります。

これは、ギムネマ茶に含まれるギムネマ酸が口腔内の味細胞に存在する甘味受容体に強く結合し、糖などの甘味物質の結合を阻害することにより起こります。ギムネマ酸は、砂糖などのさまざまな甘味は一様に阻害しますが、そのほかの味には影響を及ばしません。


●オレンジジュースをまずくする物質:ラウレス硫酸ナトリウム

歯磨きをした後にオレンジジュースを飲むとまずく感じることがあります。これは、歯磨き粉に含まれるラウレス硫酸ナトリウムという界面活性剤の作用によるものです。ラウレス硫酸ナトリウムは、歯磨き粉の泡立ちをよくしたり、爽快感を感じやすくしたりするために、ほとんどの歯磨き粉に使用されています。

このラウレス硫酸ナトリウムは苦みを増長し、甘みを感じにくくするという特徴があります。つまり、歯磨き粉を使って歯を磨いた後は、甘みや酸味がやや弱まるとともに苦味が強くなるため、本来のジュースの味と異なるまずい味に変化してしまうのです。


●温度と味覚の関係

溶けてしまったアイスは、凍っていたときより甘く感じたり、熱いスープが冷めたとき味が濃くなったように感じることがあります。 

これは、味細胞内で味の情報を伝えるタンパク質である酵素が、体温くらいの温度のときにもっともよく働くためです。味細胞が食べた物によって低温や高温の環境になると、酵素の働きが一時的に弱くなり、味を感知する働きが鈍くなります。 高温の食べ物や、低温の食べ物は、この効果を踏まえて強めに味付けされています。 そのため、時間がたってこれらの食べ物が常温になってしまうと、味細胞の酵素の働きが強まり、味が濃くなったように感じられます。

人間は一般的に、体温±25~35℃の食べ物を好み、おいしさを感じやすいとされています。つまり、温かい物は60~70℃前後、冷たい物は、0~10℃前後でよりおいしさを感じます。


甘いものは別腹!!そのヒミツは…


満腹なのにデザートは食べれてしまう…このカギを握るのは、脳内の視床下部で分泌される「オレキシン」という摂食促進物質です。

実際に舌で甘さを感じなくても、今までの食経験と想像から「こういう味だろうな」と想像することができます。これだけで、私たちの脳は「オレキシン」を分泌することができるのです。

オレキシンが分泌されると、甘い物を食べたいという意欲が促進され、消化器官の働きが活発になって、胃の十二指腸に近い部分が収縮し、胃の食道に近い部分が広がります。つまり、胃の中の食べ物を十二指腸へ送り出し、胃の入り口の筋肉をゆるませて、食べ物が入るスペースをつくり出しています。これが、別腹のしくみです。



4.味覚障害について


味覚障害の原因

味覚障害は、女性では40歳以上、男性では50歳以上から増えはじめ、割合としては女性の方が多いといわれています。 味覚の感度が低下したり、消失したりする状態を味覚障害といいますが、口の中に何もないのに塩味や苦味を感じたり、本来の味と違った味を感じてしまうことも味覚障害です。


種類 症状
味覚減退症 味が全体的に薄く感じる状態
無味症(味覚消失) 味を全く感じなくなる状態
異味症 食べ物の味が本来の味と違って感じる状態
悪味症 何を食べても嫌な味がする状態
孤立性無味症 ある特定の味のみがわからなくなる状態
片側性無味症 舌の左右いずれか片側で味を感じない状態
解離性味覚障害 特定の味(主に甘味)だけがわからなくなった状態
自発性異常味覚 何も食べてないのに口の中で味がする状態


●亜鉛の欠乏

味覚障害で多くみられる原因に、亜鉛欠乏症があります。なぜ、亜鉛が不足すると味覚が低下するのでしょうか?体に含まれる亜鉛の量は約2gであり微量ですが、体内の酵素の成分となっており、タンパク質やインスリンなどを生成する働きのほか、味覚を感じる味蕾づくりに欠かせない働きをしています。

味蕾の中にある味細胞は、体内の細胞の中でも新陳代謝が非常に活発な細胞であり、10日前後で生まれ変わるといわれています。そして、この味細胞の再生には亜鉛が重要な働きをします。このため、体内の亜鉛が不足すると味細胞の再生が追いつかずに味覚障害が起こりやすくなります。亜鉛欠乏症の要因には、薬によって亜鉛の吸収が妨げられる場合や胃腸疾患による亜鉛の吸収力の低下、食生活の偏りにより亜鉛不足になる場合があります。


●ドライマウス

唾液の分泌が減ったり、口呼吸などで口腔粘膜の水分が失われて起こる疾患をドライマウスといいます。唾液の量が減ると食べ物の味物質が溶け出しにくくなったり、味を感じる味蕾が働きにくくなるために、味覚障害が起こりやすくなります。原因としては、加齢をはじめ、よく噛まないで早食いをする食生活、生活習慣病、精神的なストレス、薬の副作用などが挙げられます。


●貧血

鉄分の不足が原因で、酵素と結合して体のすみずみまで運ぶヘモグロビンが減少し、血液中の濃度が薄くなった状態。だるさや倦怠感、めまいなどの症状が現れる前に、舌の表面が赤くつるつるした状態になり、味覚障害が起こることがあります。


●過度な刺激

辛い物や熱い物というのは、味ではなく、痛みとして感じます。辛い物や熱い物を摂取しすぎると、味蕾が必要以上に刺激されて、年齢にかかわらず味蕾が破壊され減少し、味を感じにくくなってしまいます。


味覚を高めるためには…


亜鉛を取ろう!!


味覚障害にならないためには亜鉛を含む食品の摂取や栄養バランスの取れた食事をすることが大切です。日本では、一日分の亜鉛の摂取推奨量は、成人男性で10mg、成人女性で8mgとなていますが、体外に排出されるものが大半であるため、食事で毎日摂取することが困難な場合はサプリメントで補給するのも一つの方法です。

特にインスタント食品や加工食品には、血中の亜鉛と結合する添加物などが含まれているため、このような食品ばかり利用している人には亜鉛不足による味覚障害が起こりやすいといわれています。


亜鉛を多く含む食材には、牡蠣や煮干し、牛肉、豚肉、納豆などがあります。


レモンに含まれるクエン酸とビタミンCは、亜鉛を体内で吸収しやすい形に変える働きがあります。牡蠣にレモンをかけて食べますが、とても利にかなった食べ方なのです。







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